日本では2人に1人が近視と言われています。先進国において近視は視力障害の主要な原因であり、近視は、主に小児期に進行します。また、高度な近視の場合は、視力喪失、黄斑変性症、網膜剥離、緑内障などの眼疾患に発展する可能性があります。
近視は眼球が楕円形に伸び(眼軸長が伸びる)ピントの位置がずれることで生じる軸性近視のケースが多く、一度眼軸が伸びてしまうと、もどることがありません。そのため、眼軸長の伸びを抑えることが近視の進行を抑制するためには重要です。
当院では小児期における近視の進行抑制を目的とした点眼治療を行っております。
アトロピン配合点眼薬には眼軸の進展を抑制する効果があると言われ、近視の進行を遅らせることが統計的にも臨床的にも有意義な効果が確認されています。アトロピン1%を点眼を使用した近視治療は1960年から行われていますが、散瞳(瞳孔が拡がる状態)によるまぶしさ、眼の調整機能(ピントを合わせる機能)の低下による読み書きの困難、アレルギー症状など、不快感や副作用がありました。近年アジア諸国において、低濃度のアトロピン点眼は、近視の進行抑制効果が60%程度あると報告され、副作用もほぼないことが確認されました。このことから、当院では、低濃度アトロピン点眼液を使用した、小児期の近視の抑制治療を行っています。※ 本治療は近視の進行を抑制するものであり、近視が全く進行しないわけではありません。